すべてのクラブにおいて、シャフトの選び方は重要です。
ヘッドの性能が飛びやコントロール性を左右しますが、その性能を存分に発揮できるかどうかは、プレーヤーとシャフトの相性、マッチングによって決まります。
アイアン用のスチールシャフトは見た目はどのモデルもほとんど一緒ですが、種類と重さは選ぶのに困ってしまうほどにたくさんあります。
特にアイアンの場合は、グリーンに乗せるのが主な仕事なので、左右への方向性だけでなく、縦の距離感のコントロールも大事になりますので、どのタイプを使うか、スイングとの相性はスコアに大きく影響します。
ゴルフについて、さまざまな視点から、ゴルファーの皆さんにプラスになる(かもしれない)情報をお伝えします。
今回のテーマは「アイアンのスチールシャフト 重さや硬さや種類の選び方 違いと重要性」。

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アイアン用シャフトの種類の多さと違い
「ディージー」「キューゴーマル」「ネオ」「モーダス」。
これはすべてアイアン用のスチールシャフトのことで、ゴルファー同士の会話で使われる、少し略した言い方になります。
正式には
【ディージー➡DG➡ダイナミックゴールド】
【キューゴーマル➡NSPRO950GH】
【ネオ➡NSPRO950neo】
【モーダス➡NSPRO MODUS3】
という名称になります。
シャフトは、ゴルフをしない方からみれば、ただの棒です。
特にアイアン用のスチールシャフトは顕著でしょう。
ドライバーなどのウッド系のカーボンシャフトは、長さもありますし、しなりなども感じやすいので、タイプや種類へのこだわりも多少は理解できるかもしれません。
ただ、アイアン用のスチールシャフトは短いですし、一見して、ただの鉄の棒です。
しなりの違いなどあるのか、と思ってしまっても仕方がないところです。
実際の感触もそうです。
手に持ち、ヘッドを揺らすような仕草”ワッグル”をしてみても、ドライバーならばシャフトの柔らかさを体感できますが、アイアンのスチールシャフトはわかりづらい。
しいて感じるとしても、重い軽いの差の違い、くらいでしょう。
ただ、結論からいえば、種類もタイプも重さもたくさんあり、それぞれの違いがあり、スイングとショットに与える影響、まるで変わります。まったく別物です。
アイアン用スチールシャフトの歴史 ダイナミックゴールドとNS
1990年代まで、スチールシャフトといえば重いダイナミックゴールド、軽いシャフトを選ぶときはスチールではなくカーボンシャフト、という図式がスタンダードでした。
120g前後のダイナミックゴールドは明らかに重い部類に入りますが、そこはハードヒッターやアスリートゴルファーの証。
マッスルバックやハーフキャビティにダイナミックゴールドを装着した仕様を使いこなしてこそ上級者、という時代でした。
そこに、新しいシャフトプロダクトが登場して、以降のアイアンシャフト市場は、文字通り一変します。
日本シャフト社の『NSPRO950GH』、略して“キューゴーマル”。
1999年、90g台の軽量スチールシャフトの誕生は、『スチール=重い』という概念を変えてくれました。
重い軽いというだけでなく、スチールシャフトとカーボンシャフトの一番の違いは、スイングに対する振りざまの安定感。
縦の距離感と方向性が最優先性能のアイアンにとって、しなり過ぎることは、飛距離を伸ばすというポジティブな意味合いよりも、不安定さというネガティブ要素のほうが色濃くなります。
とはいえ、重い重いシャフトを振れるアスリートゴルファーは、ほんの一部。
できれば安定感のあるスチールシャフトを使いたい、でもダイナミックゴールドは重すぎる、というゴルファーが大半を占めるなか、軽量スチール「950」が市場シェアを逆転させることに時間はかかりませんでした。
くわえて、2000年には、のちに怪物ブランドに育つ巨大な存在感のクラブが登場します。
アベレージタイプの王様『ゼクシオ』。
シニアゴルファーをターゲットとしたコンセプトのブランドにとって、アイアンに装着するシャフトは極めて重要。
同時期に市場に現れた「軽量スチール」というプロダクトは、タッグを組むには最高のコンセプトでした。
シャフト名称の最後に『for XXIO』という文字が記載されたシャフトは、重量の種類を世代ごとに変えつつ、以降の20年以上、純正スチールシャフトのラインナップとして継続しています。
ハードヒッター向けの『MODUS』、軽量級の『ZELOS』の登場
さて、ダイナミックゴールド(以下DG)と、NSPRO950GH(以下950)がスチールシャフトの2強になりましたが、日本シャフトとしては、100gを超える重量級でも、DGに市場で対抗したいところ。
軽量級では圧倒的な存在となりましたが、100g台や110g台でもシェアを拡げたい。
その狙いのもとに市場に登場したのが、『NSプロMODUS3』、略してモーダス(以下MODUS)。
シャフトの文字は、950が白い文字、MODUSは赤い文字、ビジュアルで違いをわかりやすくしていましたが、ハードヒッター=ダイナミックゴールドという選択肢しかなかったところに、質の違うシャフトを提供してくれたのが抜群のインパクトだったのでしょう。
長い間、王道として君臨していたDGでしたが、MODUSが逆転。
120と105という複数のラインナップをつくったのも功を奏し、クラブメーカーがNEWモデルを発売するときの装着シャフトのラインナップとしては、MODUSの文字のほうが圧倒的に多くなっていきました。
そして、反対側の軽量級では、日本シャフトがさらに圧勝を続けていきます。
950よりもさらに軽い『ZELOS』シリーズの登場、略してゼロス(以下ZELOS)。
60g台から80g台までのラインナップ。
実は950の下に850もあります。こちらが先に軽量化を進めていましたが、ZELOSは少し特徴が違う。
先調子、中調子というキックポイントがありますが、950も850もカタログ記載は中調子。
そして、ZELOSは先調子。
軽いだけでなく、しなりも感じやすいので、スチールシャフトを使いたいシニアゴルファーやレディースの方には最適なスペック。
さらに嬉しいことに、先調子ではありますが、それ以上に、シャフト全体にしなりを感じるよう、なだらかな剛性分布になっていて、振り心地がよいのもストロングポイントでした。
重さも選べて、スチールシャフトの安心感を持ち合わせながら、カーボンのように楽に振れる。
これには、2010年代に登場したアイアンの新カテゴリーとの相性が抜群でした。
そうです、『飛び系』アイアンとのマッチングです。
ロフトがたっていて、飛距離を出してくれるのが特徴の飛び系アイアン。
最新設計の『飛び系』のヘッドは、ロフトがたっていても高弾道を可能してくれていますが、スピン量の調整やヘッドの“走り”はシャフトが仕事をするところ。
950よりも、その分野の専門家であるZELOSが装着シャフトとして市民権を得ていくのに、こちらも時間はかからず。
現在では、飛び系カテゴリーとして新発売されるモデルの多くに、スタンダードな純正シャフトラインナップとして、カタログに名を連ねています。
さて、ハードヒッターを対象として、長らく王道を突っ走っていたDGも負けてはいられません。
120g台の重量級だけでなく、100g前後、もしくは90g台や80g台にもDGの“粘り”特質をそのままに、ラインナップを増やしていきました。
さすがに、90g台や80g台のシャフトには若干の違いを感じますが、それでもDGファンにとっては嬉しいプロダクト。
もともと、MODUSや950は、DGとは違う特質。
軽量化だけを目的としてDGから950にシャフトを変えたゴルファーも多かったので、軽量のDGは嬉しい新作。
「特質はダイナミックゴールドが好き」というニーズに見事にこたえてくれた感があり、まだまだ市場のシェアは少ないですが、新品も中古品も、徐々に見かける機会が増えてきています。
アイアン用スチールシャフトの選び方 DGかMODUSか
重量級の2つのプロダクトですが、どちらが優れている、という比較以前に、まずタイプが違います。
諸説あるとは思いますが、筆者の意見としては、DGが合う人にはMODUSは合わない。
逆もまたしかり、MODUSが合う人にDGは合わない。
フィーリング面が占める割合が高いので、厳密に比較すると、相性という意味での違いをはっきりと感じてしまうのです。
では、100gを超えるクラスのスチールシャフトを使いたい場合はどうすればよいのか。どちらを選べばよいのか。
ドライバーなどのシャフトと同様に、フィッティングによって、打ち比べによってマッチングを探していく作業にはなると思います。
しかし、アイアンのシャフトは、さらにプラス要素があります。
「試しに打ってみる」というだけでなく「コースで使ってみる」という作業が必要になるということです。
なぜか。
ドライバーは試打をして、各数値を計測して、という作業でかなりのマッチングを探せると思います。
それは、練習場や試打ブース、そして現場となるコースのティイングエリアもほぼ同じシチュエーションだからです。
もちろん、風があったり、コースレイアウトのプレッシャーがあったり、完全に同じではありません。
ただ、平らでフラットなライからティーアップして打てる状況。外的要因がプラスされるだけで、あとはほとんど同じ感覚で打てるのです。
しかし、アイアンは違います。
風やレイアウトのプレッシャーだけでなく、フェアウェイもあればラフもある。
フェアウェイとて緩やかな傾斜もあれば、ディボット跡から打つときもある。
山や谷の斜面にいってしまえば尚更です、まずベストなスイングはできない。
そして、グリーンを狙うときは、左右だけでなく、縦の距離感も考慮にいれなければならないので、フォローやアゲインストなどの風がもつ意味合いが、ティーショットの時とはまるで違ってきます。
つまり、現場らしさ、実践的に、という要素が本当に満載。
練習場や試打ブースなどの計測だけでは完全に不足、厳密なマッチングを探し出すには不確定要素が多すぎるのです。
ここに、その時々の好不調、コースの特徴が長い短いなどの違い、その日のコンディションの差などを考えたら、数ラウンドではなく、ある一定期間が必要といってもよいほど。
できるかぎり適正なマッチングを探し出すには、さまざまなシチュエーションでの実践と、時間を要する、というのが、DGかMODUSか、というチョイスに対しての最適な方法では、という見解です。
アイアン用軽量シャフトの選び方 軽量スチールかカーボンか
次は軽量級のチョイス、軽量スチール(950や850、もしくはZELOS)か、カーボンシャフトか。
重さとしては、10g前後の違いしかないケースもある、この2タイプ。
ここでお伝えしたいのは、ひとつのアイアンモデルの純正シャフトとして、または中古モデルに、両方のシャフトがあった場合、どちらを選ぶべきか、というテーマ。
ゼクシオなどのアベレージタイプ、そして『飛び系』モデルの場合は、かなりの率で出会う選択肢になります。
さきほど、重量級スチールでは、ラウンドでの実践が必要、ということをお伝えしましたが、こちらのカテゴリーでは少し認識がかわります。
なぜか。
DGやMODUSが装着されているアイアンの場合は「風などの違いによって」というケースバイケースを要素にいれたように、コントロール性能が、重要さの中でかなりの割合を占めます。
つまり、ヘッドをどう操るか、そのためにシャフトがどう動いてくれるか、という点がシャフトチョイスの優先事項になってくるのです。
ただ、こちらのカテゴリーでは違います。
とにかく振りやすいこと。
コントロール性よりも、いかに楽に振れるか、それによってヘッドがボールを弾いてくれるか、という点のほうが大事なポイントとなってくるのです。
極端な表現かもしれませんが、計測もいらないと思います。
2つのシャフトを振りくらべてみて、どちらのほうが自身のスイングにとって振りやすいか。
意外に思われるかもしれませんが、軽い=振りやすい、にはならないケースが本当に多いのです。
軽い方が原理としてはヘッドスピードが速くなります。計測して飛距離をみたときに、必然的にカーボン装着のほうが飛距離がでてしまうことがあり、それを基準として「こちらのほうがよい」という決定になりかねない。
とにかく振ってみて、打ってみて、しかも1球ではなく、10球以上。
比較して、どちらのほうが、フィーリングとして振りやすいか。
感覚の世界ですが、これが大事なのです。軽ければよいというわけではない。
同じヘッドで軽量スチールとカーボンが装着されている品を同店舗さんで見つけて、打たせてもらえるブースがありましたら、是非振り比べて、打ち比べてみてください。
たしかな違いを体感できると思います。
まとめ
今回お伝えした中で「タッグ」という表現を使いました。
ヘッドとシャフトの組み合わせ、アイアンに限らずですが、新しいモデルを選ぶときの視線は、大半がヘッドに向けられています。
ただ、シャフトの重要性は、相性という点にフォーカスすると、ヘッド以上かもしれません。
いかに優れた性能や機能や打感を持ちわせたヘッドのアイアンを選んでも、オリジナルな自然体のスイングをしたときに、オートマチックにインパクトのタイミングが合ってくれなければ、もっている威力は発揮されないからです。
ヘッドとシャフトが「タッグ」として、うまく融合してくれれば、ゴルファーの練習の成果も使うモデルの性能も、最大限に発揮してくれる可能性が高い、ということです。
幸いなことに、というようにあえて表現しますが、ドライバーなどのシャフトと比較すると、アイアン用シャフトは、メーカーもモデル数も多くはありません。
タイプや重さも無数ではなく、シャフトを探す旅、というほどには道は長くないと思います。
いくつか試していくなかで、幸運にも早めに、かぎりなくBESTマッチングに近いシャフトに出会えるかもしれません。
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