ゴルフクラブのバランス。またはスイングウェイトとも呼ばれます。
バランスとは、かたい表現をするならば「クラブの重量にかかわる尺度」。やわらかくシンプルな表現をするならば「クラブの振り心地をあらわした数値」というほうがわかりやすいかもしれません。
メーカーの公式サイトやカタログをみると、クラブのスペック表の中にはかならずといっていいほど記載されていて、AからEまでのアルファベット一文字と数値で表されます。「C9」や「D1」、小数点までいき「D3.5」という数値も見ることもあります。
今回は、クラブに関する知識のなかでも、総重量やシャフトに匹敵するほど重要なバランスについてご説明していきたいと思います。
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長さの違うクラブを近い感覚で振るために
「バランスって気にしたほうがいいんですか?」というご質問をいただくことがあります。
その度に即答していますが、「気にしたほうがいいですよ」という言葉だけではなく、その理由も必ずつけ加えています。
冒頭でお伝えしたように、バランスは「振り心地」を数値にしたものともいえます。
そもそも、なぜバランスという概念がうまれ、それほどに重要視される存在となっているのか、ちょっと歴史の部分にも触れます。
計測方法や基準は時代とともに変化していますが、考え方そのものが世に登場してからは約1世紀もの歳月が経っているそうです。
きっかけは、「長さの違うクラブの振り心地をそろえる」ということ。
セットのなかで考えてみましょう。
一番飛距離を出すドライバーはヘッド重量が軽く、もっとも飛ばないウェッジが重い。ロフトが寝ているとフェース面積が大きくなり、比例してヘッド自体が重くなるので、このような理屈になります。
軽いものは長く、重いものは短く、という設定にすることで、振り心地は近づくように感じます。これを数値化したものがバランスの初期の考え方といわれています。
昔はバラバラだったクラブの重さ
よほどゴルフの歴史に興味をお持ちのかたでなければご存じでないかもしれませんが、かつてクラブのシャフトは木製で、グリップも革巻きになっていました。
ライン生産されたシャフトでもなければ、重さがある程度統一されたラバー製のグリップでもない。個体ごとの誤差どころか、おそらく重さはバラバラだったでしょう。
そのまま組合せて使うと、振り心地もバラバラ。その都度、振り心地の違うクラブに合わせたスイングをしなければならない。
それを一定の基準で計測して、重さを調整してできるだけ同等の振り心地で振れるようにしたのが、バランスという考え方のベースになっています。
ここまでお読みいただくと、少しおわかりになりますか?
青文字で表した箇所「振り心地の違うクラブに合わせたスイングをしなければならない」というところです。
パターを除けば、ラウンドでは最大13本のクラブを使うことになります。すべての番手が同じ役割をもつわけではありませんから、振り心地という「フィーリング」に類いするジャンルにフォーカスすれば、もちろん違いはあるでしょう。
それぞれのクラブを同じ感覚で振れることのメリット
ですが、例えばドライバーとフェアウェイウッド、そしてアイアンとウェッジ、長さもシャフトの質も近い。できれば、同じ感覚で振りたいですよね。
練習場ならば、数球ずつ打つことができますから、まだ自身の感覚を調整して合わせていくことはできるでしょう。
ですが、コースでは素振りくらいしかできません。もし、それぞれの振り心地が違えば、都度それぞれの違いを思い出して、合わせて振らなければならない。
これは、相当にハイレベルな作業ですよ。
せっかく道具が進化してくれているのです。恩恵は最大限に活用すべきです。できるだけシンプルにプレーできるように、クラブの「バランス」を考える。
「気にする」というよりも、もう一歩も二歩も先に。「把握する」。そして「自分に合ったバランスにする」。
できれば、ここまでの作業をオススメしたい。ここからは、具体的なプロセスをお伝えしていきます。
バランスを知ることでショットへの影響も
バランスを計測する機械があります。いくつか種類がありますが、一番メジャーなのは下のタイプでしょう。
工房を併設している大型店舗さんで見かけることもありますし、最近では中古クラブチェーン店さんでも店頭に設置してサービスの一環としているところもあります。
店舗さんによってはもしかしたら有料になってしまうかもしれませんが、できれば全番手のバランスを計測してもらってください。
とくに、アイアンセットは大事です。
大きい番手は5番か6番か、番手構成はセッティングによって違うかもしれませんが、ウェッジまでの各番手をしっかり計測することをオススメします。
理由は、バランスの数値に波があることが意外に多いからです。
メーカーから発売されている新品は多少の誤差があるだけで、ある程度は公式記載の数値になっていることが多いですが、全品が完璧に、というわけではありません。
中古モデルはバランス計測をオススメします
そして、中古クラブはもっと可能性大です。どこかでリシャフトされたり、グリップ交換がされていたり、バランスが変わる要素を含んでいることが少なくないのです。
ひとつの例ですが「アイアンセットの中で特定の番手だけ調子が悪い」という場合は要注意です。
筆者はクラフトマンとして工房作業をしていたこともありますが、お客様から「アイアンのなかで7番だけ振るときに違和感がある」というご相談をうけたとき。
おそらく、と思いバランスを測ってみたら、案の定7番アイアンだけ少しズレがあることがわかりました。
この例は決して珍しいことではありません、意外に多いのです。
実際に計測してもらって、各番手のバランスを把握する。正しいバランスというのはありませんが、あなたが振りやすいバランスは見つかると思います。
まずは一度、バランスを統一して調整してみる。スチールシャフトであればD1かD2くらいで、カーボンシャフトであればD0くらいで。
そして、練習場とコースでしばらく振ってみて、打ってみてください。さまざまな設定を試すことをくり返していくと、あなたにとっての適正が見えてくると思いますよ。
気軽に相談できる専門家をみつけましょう
バランスというキーワードを検索すると「上級者」という言葉が出てくることがあります。
「上級者が気にするバランスとは…」というような表現ですが、筆者の見解は少し違います。
先にお伝えしたように、バランスとは振り心地をあらわすものです。使い手のヘッドスピードや平均スコアは、関係ありませんよね。
逆に、バランスをしっかり把握して、整えて、適性をみつけておけば、クラブのセッティングという意味でのマイナス面の懸念は払拭されます。
ゴルフを始めたばかりの初心者の方であれば、たしかにスイングをしっかり作っていくことからのスタートになります。ですが、ベストスコアが100をきり、90をきってというステップのゴルファーであれば、バランスなどのクラブの調整は気にしておくべきです。
その際の、ひとつのアドバイスをお伝えします。
工房作業をしているクラフトマン、もしくはクラブに詳しいスタッフさん、いつでも気軽に相談できる専門家をひとり見つけてください。
大げさな表現をすれば、クラブのことで悩んだときに何でも相談できる主治医のような存在ですね。
今回のテーマにしているバランスもそうですが、ショットの成否は、スイングだけでなくクラブのセッティングによる影響も多いにありえます。
ですが、この分野は専門的な知識と道具が必要ですし、そこでもらえるアドバイス次第で、道が開けることも結構あります。
ぜひ、ご近所の店舗さんを検索してみてください。さらにゴルフライフが充実していくこと、間違いナシですよ。
まとめ
バランスの数値を知るのは計測器が必要です。ですが、違いを体感するのは意外に簡単です。
店舗さんで鉛が販売されていますよね。5gくらいでいいので、ドライバーのヘッドのソール中央に貼ってみて打ってください。
次は、ソールから剥がして、グリップのすぐ下の箇所に巻くように貼ってみてください。
これだけの作業で、2つのバランスを体感できます。
前者が振りやすいか、後者が振りやすいか。簡単な作業ですが、感覚はつかめると思います。
是非いろいろと体感してみてください。
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